peace of mind

私も いつかそこに 辿りつく

夢のあとのあと

遅ればせながら、一昨日の小沢道成さんの「夢のあと」の感想を述べておく。始まる前のわくわくはこちらを↓

tr-kana2.hatenablog.jp

あっという間の約40分間だった。2日経った今も、まだ余韻に浸ってる。新しい観劇スタイルと、作品の感想2本立てで!

 

新しい観劇スタイルの感想

劇場エントランス、内部、売店、客席、ステージの様子を観ると、すぐに小沢さんらのいる劇場に行って、ライブで、生で観たい、という気持ちに駆られてた。オープニング映像の、モノクロでスタートしたのが劇場に入った途端にカラーになる演出、ステキだった。さぁ始まる! というワクワク感、期待感が高まった。けどもドキドキワクワクが高まれば高まるほどに、

  • つになったら前のような観劇が出来るんだろう
  • なんで私はここで1人で観てるんだろう

って少し暗い気持ちになったりもした。

小沢さんの声の響きや、お腹の底に届く低音のBGMとかはどうしたって届かないから。会場の匂いや皮膚に感じる冷たさや温かさ。隣の人や前の人や、客席全体の微かな揺れ動き、笑ってる、喜んでる、悲しんでる、といった体感できる皆の感情が何もなかった。いうなれば孤独だった。ずっと自分1人の感情、感覚と向き合っていた。けども今回、そんなどんよりとした悲しい気持ちとは他に大きな気づきも得られた。それはうまく言えないのだけど、大きく分けて2つあって

 

①自由度の高い観劇方法
②1人だけの舞台という贅沢&優越感(一方で孤独)

 

に尽きる。劇中にあったセリフ(正確ではない)

演劇はなくても良いけど、必要な人には必要なもの

に端的に表されている気がした。

 

①好きなワインを飲みながらの観劇。メモが自由に好きなように取れた。好きな格好で、姿勢で観れた。観劇の際、要求される「ちょっとの無理」感がゼロ。善し悪しだけども、これはこれでありだなと。例えば、帝劇での正装で観劇、カジュアルな服装はダメという不自由さも手伝った「特別感」みたいなものを出すのは難しいかもしれないけども、「観劇する」ことに慣れていない人にとってはハードルが下がって良いことな気がしたし、観劇に慣れている人だって、時々は(10回に1回くらいは)こういう観劇スタイルも良いかもなって。あと地味にだけど、トイレにいつでも行けるというのも良かった(笑)。DVD/BDと違って観返せないよ、という無言のプレッシャーありというのが肝。

 

②まだうまく表現出来ないのだけど。上演開始から終わりまで、私のために演じてくれている、1対1で魅せてくれてると感じた。他の観客の影がないから(唯一分かるのは左上の視聴の人数だけ)いわばマンツーマン指導のような贅沢さ。私のために演じてくれている、自分だけにメッセージを送ってくれている、という気がして濃かった。上演時間は40分程だったけど、1時間にも2時間にも感じられたし、役者さんのパワーを1人で受け止めている感じがして、嬉しかった反面、正直、ちょっと重かった。だって、こちらが受容度100だとしたら演者さんの発信度合パワーは500くらいだから。1人で受け止めるのは正直しんどい。誰も他にいない状態で観ることが贅沢だけども、孤独で重いなんて。。。私は、「世界で1人のためだけの●●」というのに向かないことが分かった(苦笑)。

 

作品の感想

「夢のあと」は、「大切な場所」を失った女性(田中さん)が再び「大切な場所」を見つけたという物語。

 

劇場の売店で働いている主人公の田中さん(ある程度の年齢の女性)がある日、「暮らしを支える人たち」というテーマでインタビューを受けることになった。

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インタビューアー髙木さん(男性)は音声のみ。ステージには田中さん1人。傍らにラジカセ1台。そのラジカセから髙木さんの声がし、質問をするという構図、いたってシンプル。シンプルだからこそ、ごまかしはきかない。小沢道成さんの巧みさは、ラジオの音声との掛け合いから伝わってくる。お笑いでもこういうのあったなぁとふと思ったけど、難しいだろう間の取り方が絶妙で、今この瞬間にリアルにインタビューが行われているように感じられる。

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小道具の使い方もうまい。ラジカセ、養生テープ。養生テープを使って、空間も時間をも超えて魅せてくれた。この空間はこいう意味よ、という歌舞伎のような「型」を自然に示してくれたおかげで、田中さんの過去(駅の売店で働いていた時の印象的なエピソード)に導いてくれた気がする。

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小沢さんの男性にも女性にも、大人にも子供にも、人間にも妖精にも魔物にも何にでも変えられるステキな声は顕在だった。ほんと素晴らしい。

コロナ禍の時代を反映させた困難な時代をひたむきに、愚直なまでに生き抜く人々の営み。大切な場所を守り続けることの難しさと尊さ。今を生きる私たちに投げかけてくるテーマがふんだんに盛り込まれていた。

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終わった後も考えてしまった。その?は今も続いている。